2024年に劇場または配信で公開された映画の個人的ベスト10とその感想です。あと、下の方に個人的主演男優・女優、助演男優・女優賞なんかも。
10位『陪審員2番』
監督:クリント・イーストウッド
94歳Cイーストウッドの引退作…と信じたくない切れ味の傑作。開幕数分で話の全体像と主人公の置かれた状況が完全に理解できて没入必至。罪悪感や良心の呵責から、自身は善人でありたいと願いつつ、同時に真実を語る程強くはなれないN・ホルトの繊細な演技が至極。ある種最高の「鹿」サスペンス。
9位『ナミビアの砂漠』
監督:山中揺子

いわゆる「映画の登場人物らしさ」から解脱して躍動する主人公・カナ。一皮むけば無神経・有害性が露わになる男たちの闘争し、磨耗する彼女が、女性達との邂逅や「砂漠」に見出す救済。『汚れた血』を彷彿とさせる軽快な疾走感から沈みゆく身体まで、重力を自由自在に操る河合優実さんの身体性が炸裂した一作。
8位『チャレンジャーズ』
監督:ルカ・グァダニーノ
とにかく画面から沸き立つ「エロさ」に満ちた一作。愛憎入り混じる主人公3人の関係性にラリーの応酬は、勝ち負けを超えて互いを誘惑&挑発する共依存的関係に突入。ゲームルールを掌握して、物語的絶頂を特等席から眺めるゼンデイヤ演じるタシの無敵感。
7位『ソウルの春』
監督:キム・ソンス
1979年韓国、後に大統領となる全斗煥をモチーフにした保安司令官主導の軍事クーデターの一夜を描いた一作。ケイパー物的ワクワク感や、指揮系統不全や有害な上層部から生じる組織内あるある的な面白さ。自国の暗部を描いた映画が、国民の4分の1が観た歴代1位ヒット作品になるという韓国映画とその観衆の成熟性に驚く。奇しくも24年12月の尹錫悦大統領による非常戒厳の宣布によって、本作が極めて現在性を帯びることに。
6位『悪は存在しない』
監督:濱口竜介

グランピング施設建設に端を発する歪みは、自然/都会的な二元論は拒絶され、当初「悪」に見えた要素のあまりに魅力的な会話劇によって強調される。同時に口当たりの良い物語的帰着も回避され、『寝ても覚めても』を彷彿とさせる突き落とされる感覚は、自然の無慈悲さや「わかったつもり」への警鐘として痛烈な余韻を残す。
5位『夜明けのすべて』
監督:三宅唱
自分のままならなさは解消できなくても、できることがある。絶望的な日々のおかげで見えてくることもある。良いも悪いも、全ては移ろいゆく。夜明けの澄んだ空気の中で、浅くなった呼吸を整えてくれるような後味。恋愛規範を微塵も感じさせない主演2人の空気感、脇を固める渋川清彦さんをはじめとする役者さん全員素晴らしい。
4位『ぼくのお日さま』
監督:奥山大史
どこか懐かしさを湛えたショットの連なりは、まるで自分自身の原風景の記憶。登場人物達に訪れる人生における奇跡のような瞬間達を捉えるまなざしと、彼らを包み込む、光の映画。観客に委ねられる余白と余韻を包み込むエンドロールが見事。
3位『ロボット・ドリームズ』
監督:パブロ・ベルヘル
孤独な日々を過ごす主人公・ドッグと、友達ロボットが出会ったあの夏。80年代/当時NYへのラブレター的要素含め、「宝物のような過去」を懐かしく&愛しく思う感情の本質にタッチするような。それら過去の累積としての「現在」の人生を祝福する、ここ数年でもトップ級の催涙効果の高い大傑作。
2位『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』
監督:アレクサンダー・ペイン
映画全体を纏う「クラシカルな傑作」然としたムードとたたずまいにノックアウトされる。喪失感や深い哀しみを抱えた3人の居残りからのロードムービー。過去によって今の世界が照射される故に、歴史から学ぶことの意義を説くと共に、人生は決して過去によってのみ定義されずいつでも白紙ページから始められるという背中を押してくれる一作。『いまを生きる』な後味に落涙。
1位『パスト ライブス 再会』
監督:セリーヌ・ソン

恋愛映画以前に、人同士の出会いという奇跡についての映画。未来に向かって左→右に流れる画面の動きが、中盤以降どう変質するか。ドラマチックな巡り合わせより、自分が辿り着いた日常の肯定。登場人物達は、24年の時間経過によってではなく、人生のもどかしさと折り合いをつけることで大人になる。
部門別
【主演女優賞】
河合優実(『ナミビアの砂漠』)
【主演男優賞】
ポール・ジアマッティ(『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』)
【助演女優賞】
トニ・コレット(『陪審員2番』)
【助演男優賞】
ファン・ジョンミン(『ソウルの春』)
【ベストオープニング賞】
『恋するプリテンダー』
【ベストエンディング賞】
『チャレンジャーズ』
【ベスト悪役賞】
ジェシー・プレモンス(『シビル・ウォー アメリカ最後の日』)

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